※ このページは、「ビケ♪とダンナのアメリカ珍道中」と「学会&音楽祭レポート in USA」の共通コンテンツです。

 

8.ヴァーミリオン (2003516日〜20日) 

 

カンファレンス2日目。出かける前の晩、睡眠時間2時間の割には、ちゃんと起きることが出来て、よかった・・・。

 

サウスダコタ大学キャンパス

キャンパス内にはチャペルもある

 

9時から945分まで、前の晩のコンサートで演奏したS氏が、フランスの有名な2人の作曲家の、チェンバロ教師としての姿を比較するというもの。講演者に、書いてあるもの(用意してきたレジュメや、論文そのものなど)を読まれてしまうと、私の英語力ではなかなか理解しにくいものがあった。でも、しっかりMD4倍速で録ってあるし!(聞き返しても分からないものは分からないかも・・・)つづいて、T女史が、演奏しながら体の動きで、音楽の方向性を視覚的にも示すという、一種のボディーラングウィッジを提案。でも、よほど非音楽的でない人でない限り、言われなくても自然とそうなっているような気も・・・また、体の動きに気をとられすぎると、とっても微妙なチェンバロのタッチに影響しそう(実際に、女史の実演でも、体が動くたびにタッチが強くなっていた)。

 

休憩を挟んで10時半からは、H氏がクラヴィコードの演奏。右目のあたりを怪我されていたせいか、もしくは、お年のせいか、ちょっと足元がふらつく場面も(演奏も・・・)。もともとピアニストの方だったようで、強くたたくと音程が上がってしまうクラヴィコードの弱点が、もろに出てしまっていたのが残念。次のB氏が、今度はジルバーマンという、ドイツの有名な楽器制作者によるスピネット(小型のチェンバロ)と、夕べより使われているフレンチの楽器で、ドイツとフランスの曲を弾き分けていた。とても素敵だったけど、和音の鳴らし方が荒っぽいのがちょっと・・・午前中の最後には、M女史が、チェンバロの残響の生かし方について、いくつかの例を挙げつつ説明。でも、これも、チェンバロと付き合ってる人ならいつもやっていることだと思うんだけど・・・

 

展示室の様子

 

 

 

 

 

箱型チェンバロ

 

お昼をはさんで、最初の講義は、「タンゲンテンフリューゲル」という、初期のピアノの一種についてだったが、聞かずに、アメリカ各地の製作家が楽器を展示している会場へ。2つの部屋に、10人前後の製作家が、15台くらいの鍵盤楽器を展示。意外と少ない印象。珍しかったのは、アメリカ国内では、ここの博物館にたった1台しかない、ポルトガルのチェンバロをコピーしたもの。イタリアの明るい発音と、ちょっと陰のある余韻を残す、本当にユニークな音でした。それから、箱型チェンバロ。響板を四角に折りたたんでしまって、30センチ四方×鍵盤の幅の直方体に納まってしまっている。音は結構良く鳴ります。こんな楽器持ってたら、どこでも練習できていいな!他には、M氏のジャーマン、V氏のフレンチなどが、気に入りました。

 

講義に戻って、C女史のクラヴィコードによるモーツァルトの演奏。彼女の繊細な音の描き出し方は、モーツァルトの新たな一面を浮き出させているようで、とても印象深いものがありました。

215分からは、日本人のチェンバリスト、平林朝子さんによる、C.Ph.E.バッハ(有名なバッハの次男)の作品の演奏。カークマンというイギリスの製作者のオリジナル楽器を使用し、珍しいスウェル(弦の上に開閉する扉が付いていて、それによって音量を調節できる)を使うなど、楽器の魅力を存分に引き出したエネルギッシュな演奏でした。曲と楽器がとても合っていたので、ご自分で楽器を選ばれたのかと思ったら、楽器は、パフォーマーのプログラムを見て、カンファレンスのオルガナイザーが決めるとのこと。スウェルを使うのも、ここに来て始めて、「みんな見たいだろうから」使うことに決めた、とのことです。

午後の講義の最後は、Spanyi氏による、クラヴィコード演奏。こちらも、C.Ph.E.バッハの作品が取り上げられ、蓋に見事な装飾画が施されたKreamer製の大型のクラヴィコードで演奏されました。

 

クレマー製クラヴィコード

 

3時半から5時までは、さきほどの楽器展示ルームにて、製作者によるデモンストレーションがありました。さっきはがらんとしていた部屋に、いすが並べられ、1台ずつ製作者による説明がなされ、製作者自身か、製作者が依頼した演奏者によって、実演で音を聞かせてもらえました。面白かったのは、多分日本(やヨーロッパ)だったら、その楽器の様式にあった曲が演奏されるのを期待するところですが(例えば、フランス18世紀の楽器だったら、同じ時代のフランスの作曲家の曲、とか)、演奏者の中には、自分が得意とするものの発表の場のように、あまり楽器とのつながりは考えずに、(少なくとも音は聴けるから、文句は言えない・・・)現代曲やビートルズのアレンジなども飛び出すヴァリエーション。これもお国柄なのかしら、と思いつつ、聴いていました。

 

シュパニー氏によるコンサート

 

ディナーの後は、先ほどクラヴィコードの演奏を披露したSpanyi氏による、タンゲンテンフリューゲルの演奏。タンゲンテンフリューゲルの音は、フォルテピアノ(タンゲンテンフリューゲルよりも、現代のピアノへとつながるアクションを持つ)に比べて、ある程度の力を加えてタッチすると、硬質な音がするので、そういう点では、音色のヴァラエティーに富んでいるといえます。フォルテピアノが持つ音の平和なやわらかさ・丸さよりも、音色が平均化されていないといった感じでしょうか。Spanyi氏は、エッカルト、C.Ph.E.バッハ、ハイドンの作品を、本当に生き生きと、どこにも気張ったり奇を衒ったところがない美しさで、最後の1音まで弾きとおしました。すべての音が、「こうでなくてはならない」ところに収まっていたという印象で、とても心地よく、感動しました。今回のカンファレンスで、1等賞を上げたい演奏でした。

 

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