チェンバロのおいたち

 

1.   プロローグ

 

 このコーナーでは、チェンバロの歴史にスポットを当てていきたいと思います。その前に、私のある経験をひとつ。

以前、ある報道関係の方から取材で、ちょっと困ってしまったことがありました。それは、1.チェンバロという楽器について、と、2.チェンバロの音について、を、簡単に説明して下さい、というもの。「音について」は、

「たとえば、オルガンとピアノを、足して2で割ったような、とか、そういう風に説明できないですか?」

と言われ、う〜ん…誰にでも分かる、簡潔なコメントが欲しい、という気持ちは、よ〜く分かるのですが、音を言葉にするのは、難しい…結局、CDを聞いて頂き、その方の判断で書いて頂くことにしてしまいました。

そして、「楽器について」…これも、ひとことで、と言われても、所詮無理な話なのですが、結局は、

「ピアノは、チェンバロから作られたから、ピアノの前身の楽器と、言えなくはないですねぇ…」

と説明。これば、本当はあまり言いたくなかったコメントでした。なぜなら、ピアノというのは、チェンバロとは全く違った音楽様式に対応して生まれてきた、全く種類の違う楽器なのに、こういう言い方をすると、チェンバロが不完全な楽器だったから、ピアノはそれを「改良」した形で生まれてきた、と誤解され兼ねないからです。鍵盤のタッチの強さで音量を変えることが出来なかったもの(チェンバロ)を、出来るようにした(ピアノ)のだから、ピアノの方が優れている、と誤解している方は、未だに多いのではないでしょうか。私も昔、そう習った覚えがあります。

チェンバロという楽器は、生まれた当時から500年間、基本的な機構は変わっていません。部品の材料も、現在チェンバロを製作している方々が、ほとんど改良の余地がない、というほど、選び抜かれたものを使ってある、完璧な楽器なのです。そして、チェンバロの持つ特徴は、バロック時代の音楽の様式に、実に良く合ったものだったのです。(このことについては、いずれ詳しくお話したいと思います。)

チェンバロの歴史をお話する前に、私の経験談とからめて、プロローグとしました。

さて、本題は次回から。チェンバロが最初に文献に現れるのは、15世紀、ということだけ、今回はお話しておきましょう。

 

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